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サービス貿易協定とは

 

2013年 6月 21日、馬政府が反対意見に耳を傾けず、中国と「両岸(台湾と中国)サービス貿易協定」に調印した。この協定は両岸経済協力枠組協議(ECFA) に基づき、互いのサービス産業の企業に市場参入を認める協定である。協定は通信、運輸、医療を含め、金融、出版など台湾の主権を脅かす可能性のある分野まで対象になる。中国が善意を示すため、協定は台湾に有利であり、台湾の国力は向上する見込みがあると馬総統は主張している。しかしながら、協定の内容について、事前に民間機構の意見を参考せず、調印後も各産業にもたらす影響への補償案も検討する姿勢に見せずにいた。こうしたことから国内での反発の声が強まった。

 

締結前意思疎通の欠如

 

国際自由貿易協定の締結の慣習によると、自由貿易協定の締結前に政府は国会の権限委譲を受け専門の交渉担当者を決定し、国内産業の状況評価し交渉の目標と方向を決定する。協議が達成された後、国会の認可を通じて、調印のへと移行する。馬英九政府の「両岸サービス貿易協定」は交渉過程が密室で行われたため、調印後にやっと協定内容が国民に明らかになった。国会の権限委譲を受けていないこと以外に、国民は協定が調印される前に台湾と中国が秘密裏に交渉が進んでいたことを知る由もなかった。この協議は馬政権と中国との密室の中で行われた協定であり、国民、国会、学者やそれに関わる各種産業界は完全に参与することが出来なかった。

 

調印後国会審議を拒否

 

協定が調印された後、馬政権は交渉担当者が誰であるか、交渉の時間と場所を明らかにしなかった。台湾には今のところ対外交渉をチェックする制度が整っていないため、今回政府はただ「行政命令」を国会に送り、国会で審議や内容修正を拒否した。また民間からは幾度も交渉要求を申し入れたが、政府は再交渉することは国際信用を落としかねないとして拒否した。民間からは強い要望のもと、政府は20回の公聴会を開催したが、その公聴会はあくまで形式的なものであった。一週間に8回の公聴会が開かれ、それぞれ朝昼晩の3回に分かれていた。しかし公聴会は政府の指導のもと行われ、実質的な意思疎通はなかった。20回の公聴会から国民団体と、学生は意見を提出したが、政府からの回答は無く、対応も全く変わる事はなかった。

 

協定内容の問題が山積

 

台湾と中国の関係は、「特殊な国と国の関係」とされ、とも国内ともない特別な存在である。中国は常にミサイル実射演習などの「文攻武嚇」(文書による攻撃と武力による威嚇)で、台湾を併合しようとしている。サービス貿易協定により開放された様々な産業では、国家安全に関わる敏感産業(Sensitive Industrial)が数多く含まれている。さらに、中国人の就労権・永住権などの規制緩和になる上、中国資本で独資で企業の設立も可能になるという。お互いに開放する項目についても、不対等な部分があると考えられている。台湾側は全国を開放する一方、中国の開放範囲はあくまで福建・広東など限定的で、さらに中国政府は審査制度によるが外資企業の設立を妨害する記録も少なくなかった。中国は大手国営企業が大半のシェアを占めるのと比べ、台湾は昔から中小企業が経済の主役を担う伝統を持っている。両国の企業は資金面も規模の差が大きい、中国は国営企業を通じて台湾の各種資源を握り、台湾での政治工作が可能という。たとえば、通信業による情報統制や、金融業による企業を買収・合併、または出版業による言論統制など懸念が高まっている。

 

中国は台湾に「利を譲る」とは言え、実際に経済よりも政治的な目的を狙っている。「終極統一(現状を維持し、何時か統一する)」を唱える馬政府は、秘密で中国と条約を締結し、国会で強制可決しようとしている。このようにこの協定には複数の複雑な問題が混在し、それらを明らかにしてこなかった政府の怠慢もあったことから、今回のひまわり学生運動の大きな要因となった。

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